LODIQ<sup>®</sup>(ロジック)処理

LODIQ(Low Distortion Quenching)は、「軟窒化」と「浸炭焼入(浸炭窒化)」の狭間を埋める、当社独自の表面熱処理手法です。
「通常の軟窒化では強度が持たない」「通常の浸炭(浸炭窒化)では熱後歪みが大きすぎる」等の課題を解決します。

LODIQ

「LODIQとは」

浸炭窒化より低歪みで、軟窒化より高強度。

当社独自の雰囲気/温度制御技術で、低歪みと高強度の両立を実現した極低温の浸炭窒化焼入処理です。
薄板プレス部品の高強度化・低歪み化のニーズに応えるもので、低炭素鋼(SP材など)のLODIQ処理なら、低温の浸炭窒化とA1変態点付近の極低温焼入の組合せにより、通常の浸炭窒化処理よりも焼入歪みを大幅に低減(図1)。一方で軟窒化よりも極めて硬い硬化層を生成するため(図2)、通常の軟窒化に比べ大幅な強度アップが可能です。
「薄板プレス部品の軟窒化では強度不足だが、浸炭窒化では歪みが過大」といった場合に最適な処理手法です。


図1:歪み量の比較(平坦度)


図2:LODIQの効果

LODIQ-AS

「LODIQ-ASとは」

LODIQの低歪み性はそのままに、合金綱の強度アップを実現。内部硬さも向上。

LODIQ-ASは、肌焼鋼等の合金鋼(AS:Alloy Steel)向けに条件最適化を図った、新しいLODIQ処理です。
通常の肌焼鋼ガス浸炭よりも大幅に低温(浸炭窒化処理で780℃前後、焼入温度で720~730℃)で処理を行い、独自の温度・雰囲気制御技術により内部組織を二相化。低炭素鋼LODICに比べて、有効硬化層・内部硬さを向上させるとともに、低歪みとの両立を実現しました。


LODIQ-ASの金属組織


図3:LODIQ-ASの効果

特性
  1. 極低温処理により、加熱歪み・焼入歪みを大幅に低減(LODIQ/LODIQ-AS)
  2. 再表層の焼戻軟化抵抗を高め、耐焼付性・耐ピッチング性を向上(LODIQ/LODIQ-AS)
  3. 低炭素鋼LODIQに対し、有効硬化層深さ・内部硬さ・疲労強度を向上(LODIQ-AS)
  4. 粒界酸化異常層の抑制と低歪み効果により、仕上げ加工の省略が可能に(LODIQ-AS)
処理工程
処理できるスケール、規格値

660W×1230L×500H(バッチ炉)

具体的な製品例

【LODIQ】低歪みと高強度が要求される、大径薄板のプレス部品全般(ドリブンプレート・イコライザプレート 等)
【LODIQ-AS】低歪みと高強度が要求される、大径薄肉の肌焼鋼鍛造部品全般(リングギヤ・インターナルギヤ 等)

LODIQ-N

「LODIQ-Nとは」

化合物層組成を任意に変化させ、目的に応じた強化を可能に。

ガス軟窒化時の炉内雰囲気ガスを、H2センサーを用いたKN(窒化ポテンシャル)制御技術により最適化。窒化のメリットである低歪み性はそのままに、化合物層組成を任意に変化させることで目的に応じた強化を可能とする、最新の窒化処理手法です。

「化合物層の組成制御」

通常のガス軟窒化の組成であるε(Fe2-3N)は、六方晶格子で硬さは得られるものの、ポーラス(空孔)が多くもろいという性質があります。そこでLODIQ-Nでは、γ’を増加させポーラスを大幅に低減したγ’(Fe4N)の組成を持つ化合物層を生成し、疲労強度や耐摩耗性に優れた特性を付与します。



疲労強度の改善(回転曲げ疲労試験)

「化合物層レス(拡散層のみのガス軟窒化)」

H2ガス導入により窒化物の化合物層を低減し、窒素が母材鉄に固溶した「拡散層」による硬化層のみを生成する技術です。
SKD金型等の高合金鋼で化合物層の脆化が懸念される場合の疲労改善や、加工前処理の削減に有効です。



断面硬さ分布の比較(材質:炭素鋼)

特性
  1. γ比率が増加し、靭性改善により従来のガス軟窒化では困難だった疲労強度の向上を可能に
  2. ポーラスの低減により、耐面圧向上とともに微細クラックを抑制。破断耐性を増加
  3. 化合物層レス窒化により、浸炭焼入をしのぐ高い強度と大幅な低歪みを両立
処理工程
処理できるスケール、規格値

760W×1230L×720H(西工場)

具体的な製品例

【γ比率増加】ギヤ(歯元強度向上)、クランクシャフト(ピン・ジャーナル隅R強度向上)
【ポーラス低減】クラッチアウター(勘合部クラック防止)、クランクピン(高面圧剥離防止)
【高強度と低歪みの両立】クラッチプレート、スプリング、スラストワッシャー、金型 等